相撲のまわしについている「下がり」
大相撲の本場所の取り組みを見ていると、稽古中と違い、力士たちのまわしの前側に「のれん」か「フリンジ」のような紐状のものが何本も下がっていることに気付きます。
この紐のようなものは「下がり(さがり)」と呼ばれ、本場所の土俵で相撲を取るときには横綱から序ノ口の力士まで、全員がまわしに付けることになっているものです。
実はこれは単なるまわしの飾りではなく、本来は十両以上の力士が「土俵入り」をする時に着用する化粧まわしを簡略化したものだったということをご存知でしょうか?
化粧まわしが紐状に変化した理由は「取組中に邪魔だから」!
元々力士は、土俵入りのときに着けている化粧まわしをそのまま着けて取組を行っていました。
でも相撲を取るときに大きな化粧まわしを締めていたら、どう見ても相手のまわしを取って投げるような動きをするときに邪魔になりますよね。
そこで江戸時代の半ばころになると、相撲を取る時には化粧まわしの前に垂らす「前垂れ」と呼ばれる部分のない、現代のようなまわしを着用して土俵へ上がるようになりました。
しかし化粧まわしの前垂れの下側に付いているフリンジ状の装飾だけは、簡略化された「下がり」となって残されました。その際「ゲンをかつぐ」という意味で「下がりの本数は奇数」と決められました。偶数だと2で割ることができるため「土俵を割る」に繋がり、縁起が悪いというわけです。
また現代の下がりは、取組の最中にまわしから外れて落ちてしまうことがよくあります。
これは、まわしの前褌(まえみつ)に固定されていた下がりに指を引っかけてケガをする力士が続出したことから、簡単に外れるように改良されたためです。