「春の弥生のあけぼのに 四方の山辺を見渡せば
花盛りかも 白雲(しらくも)の かからぬ峯こそ なかりけれ」
※雅楽「越天楽今様」より。
月日の過ぎるのは早いもので、少し前に令和二2020年が明けたかと思えば、もう六分の一が終わって三月を迎えてしまいました。
三月と言えば、その古称を「弥生(やよい)」と言いますが、この名前にはどういう意味があるのでしょうか。
今回はそんな弥生の語源+αについて紹介します。
草木が「ますます芽吹く」弥生の月
【語源】弥(いや)+生(おい)=弥生(いやおい⇒やよい)
弥生という言葉は元々「いやおい」と読み、物事が増して・高まっていく様子を表わす「弥(いや)」に、草木が芽吹く「生(おい)」を組み合わせたものが、次第に訛って「やよい」になったとする説が有力のようです。
冬が過ぎて徐々に日が長く、温かくなって草木が芽吹き始めるこの季節にぴったりなネーミングと言えるでしょう。
弥生の他にもたくさんあります!三月の別称あれこれ
三月は草木が芽吹く以外にも、豊かな自然の兆しが見られることから、様々な別称が存在します。
雛月(ひいなづき)
3月3日に雛祭りが行われることから。
蚕月(かいこづき)
蚕が卵から孵り、養蚕が始まることから。別字体で「蠶月(さんげつ)」とも。
愈老(やよい)
弥を重ねて「愈(いよいよ)」に通じ、生いが老い(元々はポジティブな成長の意味)に通じることから。
鶯乱啼(おうらんてい)
ウグイスが乱れるように盛んに啼くことから。
花惜月(はなおしみづき)
散りゆく桜の花を惜しむ季節(旧暦3月は現代の4月)。
病月(へいげつ)
寒暖差で体調を崩しやすいことから(他の月にも使えそうな気がしますが)。
季春(きしゅん)
旧暦における春(1~3月)の最終月であることから(季は末っ子を意味する中国語)。
殿春(でんしゅん)
春の殿(しんがり。ラスト)に当たる月だから。
夢見月(ゆめみづき)
春眠暁を覚えず……かと思ったら、桜の別名である「夢見草」が咲く季節だから。
こうした情緒あるお洒落な言葉を、時候の挨拶などにさりげなく組み込んでみると、日常のコミュニケーションが楽しくなるかも知れません。