古来「牛飲馬食」と言うように、およそ大食いなんてものは下品と相場が決まっております。しかし、滅法やたらに腹へ収めたが勝ちという単純明快さ、そして何より山のような料理や海のような盃がみるみる消えていく迫力は、庶民にとって大きな娯楽であるようです。
そんな心情は昔の人も変わらないようで、今回は江戸時代の大食い記録を紹介したいと思います。
お酒の部
まずは芝口にお住まいの鯉屋利兵衛(こいや りへゑ)さん38歳から。
こちらは一斗九升五合、およそ35リットルという大酒を呑み干したという記録が残されています。水だって35リットル飲むのは大変なのに、一体どういう身体をしていたのでしょうか。
※ちなみにこの利兵衛さん、その場に酔いつぶれた後に酔い覚ましとして茶碗で水17杯(※1杯一合として、一升七合≒約3リットル)を飲んだと言われます。
余談ながら、大きな盃を「武蔵野(むさしの)」と言いますが、その意(こころ)は「野見尽くされぬ」⇒「呑み尽くされぬ(呑み切れない)」。昔の武蔵野は果てしない野原だったため、そんな駄洒落が生まれました。