「あんたって、本当に女心が解ってないんだから!」
古今東西、どれだけの男性が何回このセリフを突きつけられたことでしょうか。
「仕方なかんべ?俺ぁ男なんだから……」などと口応えしようものなら火に油、そこで仕方なく、所在なく鼻の頭など掻じるのがお決まりとなっているようです。
しかし、筆者のように特段の野暮天でなくても、やんごとなき平安貴族の皆さまでも女性たちの心をつかむのは容易でなかったらしく、今回は古典文学『更級日記(さらしなにっき)』より、平安貴族たちの恋愛模様を垣間見たいと思います。
『更級日記』について
その前に『更級日記』についてざっくり紹介すると、文学オタクの少女(作者である菅原孝標女-すがわらの たかすえのむすめ)が当時有名な女流作家・紫式部(むらさき しきぶ)の傑作『源氏物語(げんじものがたり)』の魅力に憑りつかれ、そのヒロインたち(※)に憧れながら暮らしてきた人生を振り返りつつ、各所で当時の自分にツッコミを入れるという、いわば「マイ黒歴史の総まとめ」と言った作品です。
(※)余談ながら彼女の「推し」は夕顔(ゆうがお)の君、そして浮舟(うきふね)の君だそうです。
とは言え、誰でも(もちろん筆者も)そうであるように、どんな愚かしい人生であっても、その場その場においては懸命に生きてきたことは間違いなく、一つ一つのエピソードは読みごたえに富んで面白く、また味わい深いものとなっています。
今回のシーンは、そんな主人公が15歳の十三夜(治安二1022年9月13日)。月の美しさに魅入られた彼女は、みんなが寝静まった後も姉と二人、縁側で語り明かすのでした……。