サケやマスなどの魚は、川で卵が孵化し、海で成長したのち、産卵のためにまた生まれた川へ帰ってくる性質があります。魚のこのような性質を母川回帰(ぼせんかいき)性といっています。
サケの母川回帰性を発見したのは、なんと日本人。それも、江戸時代の武士です。彼の名前は「青砥武平次(あおとぶへいじ)」。越後国村上藩の藩士でした。
新潟県村上市を流れる三面川(みおもてがわ)という川があります。江戸時代、村上藩にとってこの川から獲れるサケは大切な収入源でした。ところが江戸後期ごろになると、乱獲などにより、年々不漁となりました。当時はサケの生態も分かっておらず、途方にくれるしかありませんでした。
そこで名乗りをあげたのが、武平次。長年サケの観察をしていた彼は、「サケが産まれた川に戻ってくる」という習性に気がついており、その習性を利用したサケの養殖を行ったのです。