「色白く髪長く、容顔まことに優れたり。強弓精兵(ごうきゅうせいひょう)、一人当千の兵者(つわもの)なり」
『平家物語』(木曾殿最期)にそう記された美しい女武者こそ、木曾冠者(きそのかじゃ)こと源義仲(みなもとの よしなか)のパートナーとして名高い巴御前(ともえごぜん)。
強く賢く美しく、そして愛するパートナーとの別れ……と、ヒロイン要素バッチリな彼女ですが、今回はその生涯をたどってみたいと思います。
巴御前の出自
彼女の生まれた年ははっきりせず、書物によって大きく異なるのですが、最も早いもので仁平三1153年、最も若いもので長寛元1163年と、10年ばかりの開きがあります。
※しかし折角なので、ひとまずここでは最も若い長寛元1163年説を採ります。
ともあれ巴は信州(現:長野県)木曾の豪族(庄司。荘園の役人)・中原権頭兼遠(なかはらの ごんのかみ かねとお)と千鶴御前(せんつる/ちづるごぜん)の娘として生まれました。
彼女の兄弟には、主君・義仲の乳兄弟として共に最期まで戦い抜いた今井兼平(いまいの かねひら)はじめ、義仲を全力で支えた豪傑たちが勢揃い。
まさに総出で「木曾の御曹司」義仲に忠義を尽くした一族と言えます。