山を歩いていると、色んな鳥たちの声が聞こえてきますが、中でもカッコウとホトトギスの声は、ひときわ印象に残ります。
啼き声がそのまま名前となっているカッコウ。そして、テッペンカケタカ……特許許可局……など、色々な「聞きなし」の啼き声が特徴的なホトトギス。
“ほととぎす なきつる方(かた)を ながむれば ただ有明の 月ぞのこれる”
「百人一首」第81番――後徳大寺左大臣
とも詠まれるように、夜中でも啼く習性のために気味悪がられ、血を吐きながら啼くという伝承や、もろもろ不吉とされるエピソードが残ります。
さて、そんなカッコウとホトトギスですが、昔は姉妹だったという伝承があり、今回は柳田國男『遠野物語』から、彼女たちが人間だったころのエピソードを紹介したいと思います。
焼いたジャガイモの外側、内側
むかーし、むかし。遠野(現:岩手県遠野市)のどこかに、とある姉妹が暮らしておりました。二人は貧しくて、いつも腹を空かせていましたが、とても仲良しで、どんなに少ない食べ物でも平等に分け合って食べていました。
姉はよく、おやつにジャガイモを掘ってはこれを焼き、妹と同じ量ずつ分け合って食べていましたが、姉はいつも外側をとり、妹には内側しか与えませんでした。
「お姉ちゃん、あたいにも外側をおくれよ」
「いいえ、あんたは内側をお上がり」
そう言って、姉はいつも外側ばかり、妹は内側ばかりを食べていました。
ジャガイモの内側はちょっと熱すぎて、いつもホフホフ言いながら、食べるのが大変です。
そんな日々が続く中、妹はひとり悶々と考えこみます。
(お姉ちゃんはずるい。あたいには熱くて食べにくい内側ばかりくれて、自分は食べやすそうな外側ばかり食べている)
(もしかしたら、あっちの方が美味しいんじゃ……?)
(お姉ちゃんばかり……許せないっ!)
まったく食い物の恨みは恐ろしいもので、ある日。
いつものようにジャガイモを持ってきてくれた姉を……隠し持っていた庖丁で刺しました。