「弘法にも筆の誤り(こうぼうにもふでのあやまり)」
このことわざを一度は聞いたことがあるでしょう。「弘法にも筆の誤り」とは、どんなにその道に優れている人でも失敗することがある。というたとえ。
このことわざの「弘法」とは弘法大師のことで、弘法大師とは真言宗の開祖である空海(くうかい)の諡(おくりな)です。諡は地位の高い人が死後に付けられる名前で、空海は醍醐天皇から弘法大師の名を贈られました。
弘法大師は書に優れていたため、「書に優れた弘法大師であっても筆の誤りはある」ということから先のことわざができたわけですが、実際に、ことわざ通り弘法大師にも筆の誤りがあったことがわかる書が見つかったと、MBSニュースが伝えています。
MBSニュースによると、弘法大師の直筆を写し取った可能性が高い拓本が四天王寺大学に所蔵されており、この拓本には筆の誤りが3か所判明しているのだそう。
天皇に関係する言葉の前で文字を空ける「闕字」という用法を忘れていたり、「奉」という字をあわてて書き加えていたり…。他にも七言詩なのに、8文字になっている句がひとつあります。
引用元:MBSニュース
筆の誤りが判明したこの拓本には、弘法大師が即興で書き上げたお礼と返答の詩が書かれており、即興で下書きなしで書いているものとは思えないほど高度な技術が随所に見られるとのこと。
たとえ誤りがあったとしても、この書には弘法大師の卓越した書の技術が詰まっているんですね。
参考:MBSニュース