突然ですが、この浮世絵の赤(オレンジ)や黄色、何で着色されているかご存知でしょうか。
江戸明和期に鈴木春信らが生み出した多色刷りの浮世絵の着色方法は、浮世絵ファンから注目を集めている分野の1つです。今回は知れば知るほどハマっていく浮世絵の色材の一部をご紹介します。
赤
銀朱(ぎんしゅ)
辰砂、朱、朱砂などとも呼ばれます。硫化鉱物です。なんと、「ハリーポッター」シリーズや漫画「鋼の錬金術師」などでよく知られる「賢者の石」というのはこの石の事だそうです。鉱物から水銀を取り出して朱色を作ります。中国辰州から多く産出しましたが、日本では、伊勢国丹生(にう)などで弥生時代から採れたようです。摺った時の色味は深い赤色です。
丹(たん)
鉛丹(えんたん)とも呼ばれます。名前のごとく、鉛から作られます。顔料の粉を見た感じは赤みの強いオレンジですが、浮世絵として摺ると黄みの強い色になります。
紅
口紅や着物など、日本人にはとてもなじみ深い紅色。ベニバナという植物の花から抽出される色材ですが、その抽出方法は大変手間暇がかかるもの。ベニバナの花を摘んで額を取り除き、花びらをすぐに水洗いし発酵させます。3日ほど発酵させると、赤くなります。その後すりこぎですりつぶして餅のようにまるめ、紅花餅(紅餅)を作るのです。浮世絵で使うには、その紅花餅を水に浸け、アルカリと酸で中和して布でこし、ようやく「片紅(かたべに)」と呼ばれる絵の具が完成します。以下の図では少女の着物の色と提灯の色が紅で摺られています。