今も昔も大事な生活必需品の紙。鼻をかむ、字を書く、お手洗いに使うなど、欠かせないアイテムですね。江戸時代には古紙の再生が盛んになり、京の「西洞院紙」、大坂の「湊紙」などと並び、江戸では「浅草紙」が有名になりました。ちなみに、塵(ごみ)になるものを紙にすることから、別名塵紙(ちりがみ)とも呼ばれました。
この浅草紙、「冷やかし」という言葉の語源でもあり、おにぎり・手巻き寿司でお馴染みの四角い海苔、板海苔(乾燥海苔)の原型にもなったんです。
吉原での暇つぶしが「冷やかし」に
そもそも「冷やかす」とは、煮た紙を冷ましたり、水槽に古紙を入れて水を含ませ軟らかくする工程のこと。その紙が軟らかくなるのに二、三時間はかかったといい、その間、職人は紙を漉くことができないので暇になっちゃうんですね。
その間何をしたかというと、浅草から近い吉原へ。しかし、仕事中ですし遊女を買う時間はありません。職人がしょっちゅう遊べる金銭的余裕もないことでしょう。そこで、格子越しに遊女の顔を眺めたり、話しかけたりして楽しみ、そのまま帰ってしまうというわけです。
この、買う気も無いのに吉原をぶらぶらする行為から「ひやかす」という言葉が生まれたと言われています。
「あら、あの男また来たよ」
「あの人は金にならないよ。紙を冷やかしてる間に来てるだけなんだから」なんて遊女の声が、聞こえてきそうです。