「べらぼう」オタクぶり全開!松平定信の“蔦屋耕書堂は神々の集う神殿”に泣き笑い【後編】

高野晃彰

憎き一橋治済(生田斗真)に報復するため浄瑠璃小屋に呼び出す作戦は失敗。失敗した時の策は、まさかのノープランだった松平定信(井上祐貴)に、「毒饅頭の仇は毒饅頭で討つ」というみの吉(中川 翼)のアイデアを提案した蔦重(横浜流星)。

実父・治済の極悪非道ぶりに気がつき、成敗せねばと決意した徳川家斉(城桧吏)、徳川家治(眞島秀和)の弟で御三卿・清水家の当主清水重好(落合モトキ)を味方に引き入れ、清水宅の茶室を決戦の場とします。

一見、押しの弱そうな二人でうまくいくのか。【後編】では、緊張した「饅頭こわい作戦」と、SNSでも話題となった、黄表紙本大好きなオタクぶり全開となった定信と蔦重の別れの場面を振り返って考察してみます。

【前編】の記事はこちら↓

「べらぼう」“覚醒の上様”を巻き込む蔦重最大の大戯け!そしてオタク全開の定信との別れを考察【前編】

「一度来てみたかったのだ」初めて耕書堂を訪れた喜びで、キラキラの松平定信(井上祐貴)。こんな顔が見たかった……と思ったファンは多かったでしょう。第47回『饅頭(まんじゅう)こわい』、S…

能好きの傀儡師を瓜二つの能役者にすり替える大作戦

茶室にて、重好が茶を淹れる間に茶菓子を勧められる家斉と治済。さんざん毒で人を殺めて来た治済は用心して手を付けません。家斉に自分の分も食べるように勧めます。

自分の身を守るためなら、我が子さえ平気で毒味役にする傀儡師。もし家斉の心の中に、実父を罠に嵌めることに躊躇する思いがあったとしても、この態度で見事砕け散ったことでしょう。

飄々と「美味でございますよ」と言いつつ菓子を食べる家斉の脳裏には、大崎の「上様こそがお父上の際たる傀儡」という言葉が鮮やかに浮かんだはずです。

菓子も茶も毒など入ってないだろうと安心し、家斉に次いで茶をいただく治済。ところが急に家斉がうつ伏せになり、「謀られた!」と逃げようとするも足をもつれさせて倒れます。

その様子を、ざまをみろとでもいいたげな冷たい表情で観察する重好がなかなかに怖かったですね。

『饅頭こわい』は先週の出来事でした。今週は落語の「饅頭こわい」のあとの「次は熱い茶がこわい」を採用して「茶こわい」というオチでした。

けれど、毒は毒でも眠る毒。治済は殺さないで、阿波の孤島に閉じ込めます。

「お武家様は平気でも、わたしには自分が企んだことで人が死ぬのはどうも」という蔦重の考えと、柴野栗山(嶋田久作)の「どれほど外道でも親殺しは大罪、殺したら上様も仕掛けた皆も外道になる」との考えで、そういう運びとなったのでした。

守備よく、昏睡状態になった治済と替え玉・斎藤十郎兵衛(生田斗真)を取り替えて、治済は鍵付きの箱に詰められて阿波に向けて出立、報復は成功したのでした。

報告を聞いて、田沼意次と意知の位牌に手合わせ「やりました、やりました、やりました」と涙を流す三浦庄司(原田泰造)。最後まで「三浦殿スパイ説」が根強く残っていましたね。

けれど、私は平賀源内(安田顕)の「民が富む仕掛けを作る」という提案が実り、繁栄した相良藩の現状を視察し「源内とわしが思い描いたとおりの国となった」という意次に、しみじみ「(源内殿に)お見せしとうございましたなぁ」と感無量になって呟いた、三浦殿をずっと信じてました。

定信の報復劇は、田沼親子の無念も晴らしたのでした。

2ページ目 まるで好きな人に告白するときの女子のドキドキ感

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