ウマが飼われていた証拠
日本では、ウマ・ウシはいつ頃から飼われるようになったのでしょうか。
旧石器時代に属するフランスのラスコー洞窟の壁画に見られるように、ウマは世界的には古くから捕食されたり、毛皮が利用されたりしてきました。
また、世界では、紀元前四〇〇〇~三〇〇〇年頃、ヒツジやヤギ、ウシに続きウマが家畜化されたこともわかっています。
それに対して日本では、三世紀前半から中期の日本について記された『魏志倭人伝』によると、倭国にはウマやウシ、ヒツジなどがいないと書かれています。この記述を信じれば、当時の日本に、まだウマはいなかったことになります。
考古学的には、日本でウマが飼われていたことを示す最古の証拠は、奈良県桜井市にある箸墓古墳の周壕から出土した木製輪鎧です。
輪鎧は、ウマに乗るとき足をかけるために使うもの。四世紀初めの土器と一緒に出土しているので、その頃に投棄されたと考えられています。
もっとも、当時の古墳から他に馬具の出土はないので、箸墓古墳の木製輪鎧は稀少な存在で、権威を示すために用いられたものと推定されています。