NHK大河ドラマ「光る君へ」、皆さんも楽しんでいますか?
劇中では妻帯描写がほとんどない藤原道兼。第1回放送「約束の月」では、結婚願望をこじらせていましたね。
しかしその後、実は叔母の藤原繁子と結婚。娘(後の藤原尊子)の存在が言及されています。
なお道兼には他にも子供がおり、その長男は名を藤原福足君(ふくたりぎみ)と言いました。
幼名から察する通り、この子は元服を迎えることなく世を去っています。
今回は平安時代の歴史物語『大鏡』より、藤原福足君のエピソードを紹介しましょう。
いとあさましき悪童
……この粟田殿の御男君達三人ぞおはせし。太郎君は福足君と申しゝを、幼き人は、さのみこそはと思へど、いとあさましくまさなく悪しくぞおはせし。……
※佐藤球『大鏡』右大臣道兼より
【意訳】道兼(粟田殿)には三人の息子がおり、その長男を福足君と言いました。
この子は幼いころから呆れるほどの悪童だったそうです。
【コメント】何だか、のっけから不穏な感じですね。具体的には何をやらかしてきたのでしょうか。
無理やり舞を稽古させるが……。
……東三条殿の御賀に、この君舞をせさせ奉らむとて、ならはせ給ふ程も、あやにくがりすまひ給へど、よろづにおこづり、いのりをさへして、教へ聞えさするに、……
※佐藤球『大鏡』右大臣道兼より
【意訳】道兼は父・兼家(東三条殿)のお祝いに、舞を披露させようと福足君に舞を稽古させました。
しかし、たいそう嫌がって万事手こずり、道兼は神仏に祈祷してまで教え込んだと言います。
【コメント】子供に芸を仕込んで宴会のウケを狙うのはよくある手ですね。しかし、そんなに嫌がるのを無理強いするのはいかがなものかと……。