分からない本名
【前編】では、紫式部やその周辺の「女房」たちの呼称は本名ではないこと、そしてそれらの呼称はどのようにどのように決まっていたのか――について解説しました。
大河ドラマ「光る君へ」の主人公・紫式部は本名ではなかった!では本当の名前は……?【前編】
「紫式部」は本名にあらず今年の大河ドラマの主役として、何かと話題になる紫式部。もちろん『源氏物語』の作者として知らない人はいないと思います。[caption id="attachment_…
【後編】では、紫式部の本名が不明である点について、もう少し掘り下げてみましょう。
なぜ、紫式部は本名が不明なのでしょうか? これについてはいくつかの説がありますが、彼女が官位を持っていなかったのが大きな理由だと考えられます。
前編でもお話しした通り、当時活躍した女性たちで本名がはっきり分かるのは、皇后や中宮などの高位の女性に限定されるからです。
ただ、明確に示されていないだけで、実は紫式部は史料の中に本名で登場している、と考える研究者もいます。
例えば、文学博士で歴史学者の角田文衛は、藤原道長による『御堂関白記』に注目。1007年(寛弘四年)の条で登場する藤原香子という女性が紫式部だと述べています。ただ、これには反論も少なくないため、今のところ有力視はされていません。
ちなみに、大河ドラマ『光る君へ』の紫式部には、「まひろ」という名前がつけられています。