戦国時代、人質の身分から天下人にまで上り詰めた、ご存じ徳川家康。
幼少期から青年期まで、10年以上にわたる人質生活を送ったことによって、人間の様々な面を学習したことでしよう。
今回はそんな家康が語る「人質のとり方」を紹介。自分自身が人質にとられた経験があるからこそ、人質の効果的なとり方を心得ていた家康。その教訓は、現代にも応用できるかも知れませんね。
人質の効果的なとり方とは?
……人質をとるも。あまり久しくとり置ば。後には親子夫婦の親愛もはなれてかへりて詮なし。元より主へつかへ忠義を專ら主と心にかくるものは。親子にも思ひかゆるものなり。故に常々よく志たしませ置。時にのぞんで質にとれば。情愛にひかれてすて兼るものなり。……
※『東照宮御実紀附録』巻二十五
【意訳】家臣の離反や謀叛を防ぐために、その妻子を人質をとるのはよいが、ただとっておけばよいというものではない。
あまりに永く引き離してしまうと、親子や夫婦であっても疎遠になって人質の効果が薄れてしまうものだ。
一方、人質にとられている者たちにしても、永く共にいることでこちらと親しくなり過ぎてしまう。
結構なことではないかとも思うが、それでは人質の意味がなくなり、かえって処刑するこちらの方が精神衛生上よろしくない。
なので人質をとる時は親子や夫婦でよく親しませ、見捨てがたい状況をあらかじめ作ってからとるとよかろう。
具体的には、人質を定期的に交換するなどがよいかも知れんな。
……とまで家康が言ったかどうかはさておき、人質は殺されたくない家族を差し出させる点に効果があるもの。
処刑されたとて惜しくもない者を差し出させたところで、謀叛を防ぐ役には立たないのです。とまぁ、そんなお話しでした。