誰かが結婚するとなったとき、親だけでなく、誰しもが夫婦になる2人に幸せになってほしいと願いますよね。日本には各地にさまざまな婚礼の風習がありますが、今回は石川県と富山県の一部でみられる「花嫁のれん」という伝統文化をご紹介したいと思います。
伝統文化を後世に伝えるための工夫も行われています。
花嫁のれんとは?
該当する地域で生まれ育っていなければ、なかなか馴染みがないと思いますが、「花嫁のれん」は、婚礼の風習の一つです。婚礼に使われる特別なのれんと、そののれんを使って行われる風習のことを指します。
この風習が始まったのは、江戸時代末期の幕末ごろから明治にかけてと言われています。加賀藩の領地内であった能登・加賀・越中で始まりました。
「花嫁のれん」の特徴は、庶民の風習であるという点。のれんの多くは加賀友禅で仕立てられた豪華で華やかなつくり。さらに、のれんの上部には、新婦の実家の家紋が描かれています。
具体的に花嫁のれんで何をするのか?
「花嫁のれん」は、嫁入り道具の一つで、婚礼の日に新婦が花婿の家に持参します。花婿の家の仏間にのれんをかけます。その後、合わせ水の儀式(花嫁、花婿の家の水を合わせ、花嫁がそれを飲み、二度と繰り返さないという意味を込めて仲人がその杯を割る風習)をし、その後のれんをくぐって仏間に入り、ご先祖様に挨拶をします。
その後、結婚の儀式が始まります。婚礼の儀式の後は、のれんは夫婦の部屋の入口にかけられ、他の嫁入り道具や衣装のお披露目の際に華を添える役割をします。
伝統を後世につないでいくための工夫も
素晴らしい風習ではあるものの、使うのは結婚式の一度きり、また高価である割に実用性が低いということもあり、現代では行う人が少なくなっているのも事実です。少しでもこの伝統を受け継いでいくため、地域ではさまざまな工夫が行われています。
有名なものは、石川県七尾市にある「花嫁のれん館」。ここでは、花嫁のれんの展示を見るだけでなく、花嫁のれんくぐりを体験することもできます。
また、金沢と和倉温泉のあいだを結ぶ観光列車「花嫁のれん」も運航しています。輪島塗や加賀友禅をイメージした外観に、輪島塗の豪華な内装になっています。石川県のおいしいお食事も楽しめるので、気になる方はぜひ乗ってみてくださいね。
いかがでしたか?この記事が、みなさんが少しでも日本文化や歴史の面白さに興味を持つきっかけになれば嬉しいです。