「試験に合格しますように」「健康でいられますように」「好きな人が振り向いてくれますように」などなど、私たちは日ごろから様々なお願いをしているのではないでしょうか。
自分も努力はするけれど、神様の力を借りたいと思うときだってありますよね。それは、はるか昔の万葉歌人も同じだったのかもしれません。
今回は、驚くべきお願いが詠まれた歌をご紹介したいと思います!
ご紹介する歌とは……
今回ご紹介する歌は、万葉集のうち、巻の6、985番の歌です。
「天(あま)にます 月読男(つくよみをとこ) 幣(まひ)はせむ 今夜(こよい)の長さ 五百夜(いほよ)継ぎこそ」
というものです。
「天(あま)にます」は「天にいらっしゃる」、「月読男(つくよみをとこ)」は月読尊を指し、月の神、神話では天照大神の弟です。「幣(まひ)」とは贈り物・お供え物・謝礼として奉るものといった意味があります。分かりやすくするため、ワイロと訳しても良いでしょう。
そして次が作者が月の神にしたお願いごとの部分です。「今夜(こよい)の長さ」はそのまま「今夜の長さ」、「五百夜(いほよ)」は読み方こそ難しいですが、漢字のとおりで意味は「500夜」です。最後の「継ぎこそ」は「つなげてください・延ばしてください・続けてください」という意味です。
そのため、全体の現代語訳としては「月にいらっしゃる神様。贈り物はします。今夜の長さを500夜分もつなげてください」といったところでしょうか。500夜も続いてほしいとは、どれだけ素敵な夜だったのでしょうか。