娘はまだ嫁にやらん!?権力者から娘への求婚を歌人・大伴家持はどのように断ったのか?

雲川ゆず

「結婚をしよう」と恋人同士の二人が決めたとしても、両親へのあいさつという高いハードルが待ち受けていますよね。特に男性が女性のご両親の家に行くとき、女性のお父さんから「娘は嫁にやらん!」と言われたらどうしよう、と緊張することもあるでしょう。

今回ご紹介するのは、万葉集のとある歌。大きな権力を持つ人物から自分の娘への求婚があった大伴家持(おおとものやかもち)が、どのようにそれを断ったのか、ご紹介していきましょう。

今回ご紹介する大伴家持の歌とは?

今回ご紹介するのは、『万葉集』の巻の四、790番の歌です。作者は大伴家持(おおとものやかもち)。大伴家持は奈良時代の歌人・公卿であり、三十六歌仙のうちのひとりです。父親は大納言の大伴旅人。『万葉集』末期の代表歌人と言える人物です。

そんな彼の歌のうち、今回ご紹介するのは「春風の 音にし出なば ありさりて 今ならずとも 君がまにまに」というもの。現代語訳は「春風がはっきり音を立てて吹くようになったら(娘が成長したら)、心の霧も払われるでしょう。それまで、今はこのままそっとしておいてくだささい。時が来たら、あなたさまの気持にお任せいたしましょう」です。

大伴家持の娘に求婚したのは……?

上記の歌は、大伴家持の娘に来た求婚をやんわりと断る内容です。大切な娘への求婚を断るのであればもっとはっきりと伝えても良いのでは?と思いますが、それは相手が権力者だったから。求婚をしてきた人物は、藤原久須麻呂(ふじわらのくずまろ・仲麻呂の子)です。彼は当時の朝廷で権力を握っていました。後に、さまざまな職を歴任した人物です。

3ページ目 求婚は断る!だけど丁寧に

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