Japaaan読者の皆さんこんにちは。ライターの小山桜子です。今回は東京赤坂のサントリー美術館で2023年1月22日(日)まで開催中の「京都・智積院の名宝」展より、長谷川等伯・久蔵親子による国宝「桜楓図」について、作品と作品にまつわる悲劇をご紹介します。
等伯の長男25歳の傑作「桜図」
まずは智積院障壁画の「桜楓図」のうち桜図。これは等伯の長男・久蔵が弱冠25歳で仕上げた画壇デビュー作にして傑作です。
桜図で最も注目してほしいポイントは、なんといっても枝をたわたわと飾る白い八重桜の花びら。近づいてよくよく観察してみると、ところどころ花びらの部分がふっくらと、画面から盛り上がっているのがわかります。
この花びらの部分に使われている真っ白な色材は「胡粉」と言って、貝殻を砕いて作ったものです。それを何重にも塗り重ねる事で立体的に仕上げたもので、高い技術力が必要とされるものです。さらにこの桜図は背景が金箔貼りであるため、差し込む光が反射します。胡粉を塗り重ねてふっくらとした桜の花びらが、その光を受けてほんのり陰影をまとうところも大きな見どころ。室内に居ながらまるで本当の花見をしているような気持にさせてくれます。