神聖な食べ物
私たちにとってなじみ深いお餅ですが、これにも歴史があります。
餅は、餅米を蒸して粘り気が出るまでついて作りますが、日本には縄文時代に稲作の技術とともに東南アジアから入ってきたとされています。
とはいえ、蒸した米殻類を杵でつく製法は日本に特有のもので、中国や朝鮮半島の餅とも異なります。
古墳時代後期の蒸し器(土器)も見つかっており、少なくともこの時期には現在の製法と近い形で餅が作られていたと思われます。
当時は現在のような白米ではなく赤米でした。これは粘りが強く、炊くとモチモチした食感で、簡単にまとめることができます。
このような食料品を、当時の人は霊力を持つ聖なる食べ物と捉えていました。
奈良時代初期に編纂された『豊後国風土記』には次のような記述があります。稲作を行っていた人たちが余った米で大きな餅を作り、それを的にして矢で射たところ、白い鳥に姿を変えて飛んでいってしまったというのです。しかもその後、家は衰えて水田は荒れ果ててしまいました。
当時の餅は、丸くて大きな平たいものだったと考えられています。白い餅は縁起のよい白鳥を連想させることから、粗末に扱ってはいけないと考えられていたのでしょう。
現在でも、餅という食べ物には独特の特別さがありますね。