「上杉謙信=女性」説
少し前の大河ドラマ「おんな城主 直虎」の直虎は女性でしたが、実は上杉謙信(うえすぎけんしん)にも「女性説」が存在します。
この「上杉謙信=女性」説はいくつかの論拠によって支えられている一方、それに対する反論もあり、少しごちゃごちゃしています。本稿ではこの「上杉謙信=女性」説をめぐる議論を整理してみたいと思います。
まずはっきりと結論を言えば、「上杉謙信は女性だったかも知れないが、確たる証拠はない」のが現状です。
もしも本当に上杉謙信が女性だったら『リボンの騎士』みたいで大変面白いのですが、今のところ「女性説」の根拠として挙げられているものはどれも証拠として完璧とは言えず、いくらでも反論可能なものばかりです。
とはいえ、「女性説」を完全に否定できるほどの根拠もありません。つまり「女性説」は、「もしかするとそうだったかも知れない仮説」の域を出ないのです。
まず、最初に「上杉謙信=女性」説を唱えたのは、作家である八切止夫氏です。
彼の著作には『上杉謙信は女人だった』というタイトルもあり、本人も歴史資料を綿密に調べた上で執筆するタイプの作家だったので(作風は決して硬派なものではありませんでしたが)、「女性説」はある程度の信頼性と興味を持って一般にも受け入れられました。
「女性説」が、歴史学の研究者界隈から出てきた説ではなかった点は興味深いですね。以下では、この説を支える根拠とその反論などを整理していきます。