お稲荷さんは、五穀豊穣や商売繁盛などのご利益をもたらすとして、古くから信仰されてきました。
その一方でお稲荷さんには、信仰を止める祟られる危険な神、という背筋も凍るような噂もあります。そのため、安易に手を合わせてはならない。気軽に拝むと祟りに見舞われると危険視する向きも。
なぜお稲荷さんは神でありながら、人を祟ると言われるのでしょうか。それには、お稲荷さんにまつわるいくつもの誤解が複雑に絡み合っています。
今回はその誤解の糸を解いていきます。
お稲荷さんは人喰い鬼!?
お稲荷さんには、伏見稲荷大社に代表される神社系と、豊川稲荷に代表される寺系の2パターンがあります。そして、それぞれ祀られている神は全く別です。
神社に祀られるのは、宇迦之御魂神(ウガノミタマノカミ)。五穀豊穣を司る神です。
一方寺に祀られているお稲荷さんは、チベット仏教で鬼神として恐れられた荼枳尼天(ダキニテン)。
荼枳尼天は今でこそ、宇迦之御魂神と同様に五穀豊穣の女神ですが、元は人肉を喰らう鬼神でした。
血塗られた荼枳尼天の過去
荼枳尼天は、チベット仏教における土着の神の1人です。一糸まとわぬ姿で虚空を飛び回り、生きたまま人肉を喰らう他、頭蓋骨の器に入れた人の生き血を啜って生きながらえていました。
地面に平伏す人間を踏みつけながら、頭蓋骨の器から血を啜る絵も残されており、さながらSM女王のようです。
生きたまま人を喰らう鬼神でありながら、荼枳尼天は目を見張るほど美しく、性的魅力も高い神でもあります。そのため荼枳尼天は女神信仰の立役者として、大陸で広く信仰されていました。
そんな荼枳尼天は、空海が日本に真言密教をもたらした際に、一緒に伝来した神とされています。