さて、前に日本のお稲荷さんが京都の豪族だった秦氏の氏神から庶民の豊作祈願・商売繁盛の神様として信仰される経緯についてまとめました。
豪族の氏神からやがて庶民への信仰へと移っていった「稲荷信仰」とその経緯
全国の神社を祭神別にランキングすると、八幡神社を祀る八幡宮、八幡神社が一番多いとされていますが、道端にあるちょっとした祠や屋敷内にある邸内社まで含めると、恐らく稲荷神を祀る神社が堂々の1位にランクイン…
お稲荷さんといえば、油揚げを奉納する習慣がありますよね。今回はなぜお稲荷さんに油揚げを奉納するのか、お稲荷さんが関係している日本の食べ物についてご紹介させていただきたいと思います。
お稲荷さんにとって、キツネは神様のお使いで、そういう存在を「神使」といいますが、本来、油揚げはこのキツネに供えるものでした。油揚げといえば、現在のわれわれは、薄切りにした豆腐を油で揚げたものを想像しがちですが、キツネに供えていたものは、普段私達が食べている油揚げではありません。
先の記事にも書いたように、日本では古くから農耕を行っていたので、農作物を荒らすネズミはとても迷惑な存在でした。いっぽうで、野ウサギや鳥など自分より小さい生き物を食べる野生のキツネは人々にとって、害獣ネズミを食べてくれるとてもありがたい存在でした。
そこで、狐の巣穴の前に好物であるネズミを油で揚げた「ネズミの油揚げ」を置いていく習慣ができたそうです。その後、肉食殺生を嫌う仏教の影響で、次第に大豆を油で揚げた「油揚げ」を供えるようになっていったと考えられます。