戦国乱世から太平の世へ…新時代に適応した忍者・鳶沢甚内の転職エピソード

今も昔も、平和を保つ上で諜報活動の重要性は論を俟ちません。

しかし、いざ世の中が平和になると少なからず規模の縮小≒予算・人員などの削減を余儀なくされてしまいがち。

豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)が天下を統一し、戦国乱世もほぼ終わりつつあったころ、忍者たちもリストラの危機にさらされていました。

さぁ、これからどうやって食べていけばいいのか……今回はそんな一人・鳶沢甚内(とびさわ じんない)のエピソードを紹介したいと思います。

忍者のキャリアを盗賊稼業に活かす

鳶沢甚内は相模国小田原城(現:神奈川県小田原市)を本拠として関東地方に覇を唱えていた北条(ほうじょう。後北条)氏に仕えたと言われています。しかし、その出自や活動実績について詳しいことは判っていません。

まぁ、隠密をもって旨とする忍者だから大っぴらな記録など残していなくて当たり前なのですが、天正18年(1590年)に小田原城が陥落すると職にあぶれてしまいます。

秀吉が滅ぼされた北条氏の復讐を恐れたのか、あるいはすでに抱えていた忍者たちとの兼ね合いがあったのかも知れません。

いずれにしても仕官できなかった甚内は、かつて共に仕えていた風魔小太郎(ふうま こたろう)の部下として盗賊稼業を始めました。

「へへっ……忍び込むのは得意なんでね」

手に職はつけておくものだ……と思っていましたが、同じことを思っていた忍者崩れがたくさんいたようで、時代が下るにつれて同業者間の競合が激しくなっていきます。

人間、競合相手がいると切磋琢磨して自分を高めるよりも、手っ取り早く相手を引きずり下ろすことを考えるもので、風魔小太郎を密告する者が現れました。

4ページ目 ライバル・向崎甚内を制する

次のページ

この記事の画像一覧

シェアする

モバイルバージョンを終了