カー・セックスの誕生は平安時代?あなたの知らない性や愛に出逢える「いろごと辞典」が面白い!

性に関するスラングや表現を集めた辞書と言えば『官能小説用語表現辞典』(ちくま文庫)が知られていますが、江戸時代を中心にさらに幅広い年代の性用語を収めたのが『いろごと辞典』(角川ソフィア文庫)です。

遠回しがむしろ艶めかしい。「桃と桜のすもう」とは…?

『いろごと辞典』をパラパラとめくってゆくと、「直截的であるよりも、間接的な表現のほうが美しい」という日本の美意識が伝わる表現の数々に魅了されます。そのほんの一部を紹介しましょう。

雲となり雨となる

一見性的な匂いがまったく感じられないこちらの表現。「男女が契りを結ぶ。肉体関係になる」を意味することがあるそうです。山に住む神女が雲や雨に姿を変えて王と契ったという中国の故事に基づきます。

破れ傘

女性が上になる体位のこと。「淫水が陰茎を伝って流れ落ちる様を破れ傘の柄を雨が伝って流れ落ちる様に例えた呼び名」とのこと。

桃と桜の花角力(はなずもう)

女性同士の性行為を指します。「ピンク色の春の花がすもうを取る」というイメージには、決して他言語には翻訳できないほのかなエロスが漂います。

仏教とともに密かに伝来していたアレ

『いろごと辞典』には性愛に関する雑学も数多く掲載されています。

例えば、「性具の歴史」という項目を引くと、奈良時代に遣唐使によって伝えられたという説に始まり、平成の世の進化した性具に至るまで、1300年におよぶ性具の歴史が2ページに渡って記されています。

若衆宿」や「陰間茶屋」といった江戸の性風俗についても詳細に説明されていますが、特に「遊里」の項には以下の記述があり、性愛や性風俗がいかに江戸文化の重要な位置を占めていたかがわかります。

現代では単なる歓楽街・売春街と考えられるが、江戸時代の江戸の街では、これが文化育成の基盤であり、町人社交の場であり、教育向上の機会でもあり…(中略)…つまり、恋愛至上主義を謳歌した爛熟期の江戸文化は、唯美で官能的な特色が重要な要素であるが、これは形式や格式に囚われず、人間本来の姿を愛した町人が生み出し、負担した文化だからであり、その町人文化の中で最も自由に、そして権力や階級の圧制から脱して育ったのが遊里であったからだと考えられる。

3ページ目 狭いところでイタしていたアノ歌人や偉人

次のページ

この記事の画像一覧

シェアする

モバイルバージョンを終了