前回のあらすじ
過信は禁物!福島県に伝わる世にも恐ろしい昔話「三本枝のかみそり狐」【上】
とかく嘘の多い世の中ですが、皆さんは詐欺に遭ったことがありますか?「何であんな見え透いた手口に騙されるんだろう?自分なら、絶対に引っかからないのに」傍目では何とでも言えるもの……しかし…
「自分は絶対、狐なんかに化かされない!」
そう自信満々で三本枝(さんぼんえだ)の狐スポットへ乗り込んだ彦兵衛(ひこべゑ)は、赤子をしょった怪しい女を見かけます。
こっそり尾行していくと、着物の裾からチラリと尻尾がのぞいており、彼女が狐だと確信した彦兵衛は、女が帰宅した老婆の家へ押し込んで、赤子を奪い取りました。
「こいつは狐で、この赤子はカブか何かに違いない!」
さっそく化けの皮を剝がしてやろうと、赤子を火のついた囲炉裏へ放り込んだ彦兵衛ですが……。
孫を殺された恨みに、老婆が包丁を……
「あぁ、何てことを!」
彦兵衛に取り押さえられた老婆と女は、囲炉裏の中で燃えながら泣き叫ぶ赤子を、ただ見ているよりありませんでした。
「わはは……下手な芝居はよせ。すぐにも術が解けて、カブか何かに戻るじゃろうよ」
人間サマを化かす悪い狐を退治して、すっかり英雄気取りの彦兵衛でしたが、赤子はいつまでも燃え続け、やがて真っ黒こげになって、死んでしまいました。
「……あ、あれ?」
そんなバカな……でも、女の尻には動かぬ証拠が……そう思って尻をまさぐりましたが、尻尾など生えていません。
「きゃあっ!」
彦兵衛が動揺した隙に脱出した女は、その頬ッ面を思い切り張り倒します。そして、自由になった老婆は台所へ駆け込み、包丁を持って戻って来ました。
「よくも……よくもワシの可愛い孫を!」
その目は血走って眦(まなじり)が裂け、こめかみには何本もの青筋が浮き出して、まるで山姥(やまんば)の形相です。
「す、すまん……すまんかった!」
「殺してやる!殺してやる!殺してやる!」
「ひぃっ!」
問答無用とばかり斬りかかってきた老婆の一撃を辛うじて躱した彦兵衛は、転がるように逃げ出したのでした。