「り」
一文字だけ返って来たメッセージの文章。いきなり何なんだと思ったら、これは「りょうかい(了解)」を意味する最近流行り?の略語なのだそうです。
あまり若くない筆者はこういう軽いノリの略語でのやりとりがあまり好きではないのですが、過日、国立公文書館(@JPNatArchives)さんが、鎌倉時代の短編物語『鳴門中将物語(なるとちゅうじょうものがたり)』からこんな事例を紹介していました。
近年、若者の間で「了解」を略して「り」と回答することがあるようですが、鎌倉時代の物語『鳴門中将物語』に出てくる女房は帝からの文に「を」と書いて返しました。「を」は召し出しを承諾するということであり、後に女房は参内。男性が承諾する場合は「よ」と書きます。https://t.co/Jn9g5L0T31 pic.twitter.com/7PWZyzoUvH
— 国立公文書館 (@JPNatArchives) August 6, 2020
「御ふみをひろげて見るにこのくれにかならずとある文字のしたにをといふ文字をたゞひとつ墨ぐろにかきて……(後略)」
※作者不詳『鳴門中将物語』より。
帝(後嵯峨天皇)が女房から返って来た手紙を広げてみると、「この暮れに必ず(来てね)」と書いた部分の下に「を」と一文字が墨で黒々と書かれてあったそうです。
この「を」とは「YES」を意味する略語なのだそうで、その後、女房は返事通り帝の元へちゃんとやって来たそうです(やって来た女房と帝が何をしたかは、ご想像にお任せします)。
ちなみに男性の場合は「よ」の一文字が「YES」を意味するとの事ですが、逆に「NO」だった場合はなんて書いていたのか(あるいは、そんな選択肢はあり得なかったのか)気になります。
畏れ多くも帝に対する通信ですから「めんどくさくて略した」のではなく「なるべく人に知られたくない」ための符丁・暗号の類だったのでしょう。