前回から引き続き『陰陽道(おんみょうどう)』から生じた、“有卦七年(幸運期が七年続く)”という考え方より生まれた浮世絵「有卦絵(うけえ)」についてご紹介します。
前回の記事
「福」を呼び込め!陰陽道から生まれた幸運を祝う浮世絵「有卦絵」とは【前編】
人間というものが地球上に誕生して以来、人間は常に“不安”と闘い続けてきました。“不安”には2種類あり、1つは“目に見える不安”、もう1つは“目に見えない不安”です。“目に見える不安”ならば努力…
有卦絵に描かれた福の数々
さて前編では『有卦絵』にはその画中に“富士山、福助、福寿草、福禄寿、藤、筆、瓢(ふくべ)”などの「ふ」の字がついた物が描かれたとご紹介しました。
上掲の画面中央には三幅の掛軸がかかっています。ちなみに掛軸は巻いた状態のものは“軸”と呼び、書けた状態のものは“幅(ふく)”と呼びます。
富士山と昇り龍
一番右の掛軸に描かれているのは“富士山”と“昇り龍”の絵で、おめでたい画題と言われています。
龍は人を助けてくれるものだと言われています。その“龍”が黒雲に巻き付いているように見えませんか?黒雲は雨を降らすものです。“黒雲に巻き付いている龍”は日照りの時に恵みの雨を降らせるという説があります。
葛飾北斎も亡くなる三ヶ月ほど前に、富士と黒雲に包まれた昇り龍を描いています。この龍の姿は北斎自身の姿を描いたものだとも言われています。
福助
その隣の掛け軸の絵に描かれているのは“福助”です。“福助”とはもともと江戸で流行した福の神の人形で、願いを叶えるものとして祀られたものです。
福助を描いた『有卦絵』は色々とありますが、上掲の浮世絵もその中の1つです。福々しい顔をした“福助”が、富士山と大きな“筆”を背景に軽快に走っています。腰に差しているのは“笛”でしょう。見ているだけで笑みがこぼれるような絵ですね。