あらゆるものに神は宿る!絵師・伊藤若冲の名作「動稙綵絵 池辺群虫図」をじっくり鑑賞&解説

風信子

2020年は3月5日から約2週間、二十四節気の「啓蟄」となります。「啓蟄」とは寒い冬の間、土の中で冬ごもりをしていた虫たちが、早春の暖かさで柔らかくなった土の中から外に出てくる時期のことをいいます。

この“虫”は単に昆虫だけではなく、蛇や蛙、トカゲなど土の中で冬ごもりをしている生き物の全てを指しています。

私が伊藤若冲の『動稙綵絵』の中の一幅、“池辺群虫図”を観たときに最初に頭に浮かんだのがこの「啓蟄」でした。

この『動植綵絵』は30幅からなる動植物を描いた日本画であり、伊藤若冲の信仰する京都五山の禅寺、臨済宗相国寺に寄進されたものです。

伊藤若冲からの寄進状の中に『動植綵絵』の名前があり、“綵(さい)”という文字にはは“美しいいろどり”という意味があります。その意の通り当時の最高の画絹や絵具が惜しみなく使われた華麗な色彩による色彩画です。「山川草木悉皆仏性」の思想を描き出したものと言われています。

“山川草木悉皆仏性”とは。

仏語。草木や国土のように心をもたないものでさえ、ことごとく仏性があるから、成仏するということ (出典 小学館デジタル大辞泉より)

 

伊藤若冲の「若冲」という名は師である禅僧・大典顕常、あるいは月海元照(売茶翁)から与えられたという居士号であり、伊藤若冲は在家の仏教信者でした。

さてそれでは『動植綵絵』の中の「池辺群虫図」を絵の下半部から観てみましょう。

2ページ目 「池辺群虫図」をじっくり鑑賞

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