前世の記憶がきっかけで?平安時代のやんごとなき姫君と冴えない衛士の駆け落ちエピソード【一】

皆さんは「前世」を信じますか?

初めてのはずなのに、なぜか見たことがあるような風景や、会ったことがあるような人物など……。

単なる気のせい、記憶違いなのかも知れませんが、もしかしたら、前の人生で体験していたのかも知れません。

今回は、そんな前世の記憶から生まれた、平安時代のとある駆け落ちエピソードを紹介したいと思います。

故郷があまりに恋しくて……

今は昔、朝廷を警護していた一人の衛士(えじ)がおりました。

この男、決して怠け者ではないのですが、無理やり故郷から連れて来られた上に、地元愛が強すぎることもあって都の暮らしにもなかなか慣れず、日々の務めに身が入らないのも無理からぬところです。

そんな訳で、今日も今日とて東の空を見上げては、

「あぁ……武蔵(むさし※1)に帰りてぇだ……おっ父やおっ母の顔を見てぇだなぁ……」

などとぼやき続け、上官にどつき回される毎日だったそうな。

(※1)現:東京都+埼玉県の旧国名ですが、ここでは衛士の故郷である南東部、江戸湾沿岸地域を指しています。

3ページ目 風に吹かれるひょうたんのように

次のページ

この記事の画像一覧

シェアする

モバイルバージョンを終了