無料公開中。命がけで広島の原爆の現実を書いた詩人・峠三吉の「原爆詩集」

小山 桜子

8月6日。今年もこの日が巡ってきました。太平洋戦争末期の1945年、広島へ原子爆弾が投下された日です。

敗戦後、生き残った被爆者の多くがこの事について語ろうとしなかった中で、原爆の恐ろしさ、被爆者の怒り、悲しみを世に伝えるため中心となって文化運動を行った1人の被爆者がいました。詩人の峠三吉(とうげさんきち)さんです。

もともと病弱であった彼は、広島で病気療養の傍ら詩作活動をしており、1945年8月6日には爆心地から約3㎞地点で被爆しました。今回は「にんげんをかえせ」の序文で始まる彼の代表作「原爆詩集」の中から一部の詩をご紹介します。

 

「八月六日」

 

 

あの閃光が忘れえようか

 

瞬時に街頭の三万は消え

 

圧おしつぶされた暗闇の底で

 

五万の悲鳴は絶え

 

 

渦巻くきいろい煙がうすれると

 

ビルディングは裂さけ、橋は崩くずれ

 

満員電車はそのまま焦こげ

 

涯しない瓦礫がれきと燃えさしの堆積たいせきであった広島

 

やがてボロ切れのような皮膚を垂れた

 

両手を胸に

 

くずれた脳漿のうしょうを踏み

 

焼け焦こげた布を腰にまとって

 

泣きながら群れ歩いた裸体の行列

2ページ目 石地蔵のように散乱した練兵場の屍体

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