おならで妖怪を退治!ユーモラスな江戸時代の妖怪絵巻「神農絵巻」

湯本泰隆

どこかユーモラスで味がある『神農絵巻(神農化物退治絵巻)』

妖怪漫画のルーツ?

ひょっとしたら、この絵巻は日本の妖怪漫画のルーツともいえるかもしれません。絵巻の詞書には『猿蟹合戦』などの昔話についての言及があり、構成には『桃太郎』や『酒呑童子』などの影響もみられることから、この絵巻の成立自体は江戸時代以降と考えられています。

絵巻の主役である神農は、古代中国の伝承に登場する三皇五帝の一人で、人々に医療と農耕の術を教えたといわれています。

このことから、神農は、医薬と農業を司る神とされています。薬王大帝(やくおうたいてい)、五穀仙帝(ごこくせんてい)とも呼ばれています。海をわたって日本でも信仰されるようになりました。

絵巻の全体的な話のあらすじはこうです。

その昔、暴れる妖怪たちに業を煮やした農民は、神農に妖怪退治を願いました。

神農は、猿丸太夫、犬坊丸、鳥海弥三郎をお供に従え、彼らに命じて芋や栗をたくさん茹でさせ、妖怪退治に出発。一行は遭難者と偽って、妖怪ヶ島の城郭に入り込み、妖怪の大王と酒宴を催しました。

その晩、妖怪たちが寝静まった後、四人は芋や栗を腹いっぱいに食べ、大砲のような屁を放って大暴れ。たまりかねた大王は四人に宝物を差し出し、許しを請うのでした。

2ページ目 誰によって何の目的で描かれたのかは不明

次のページ

この記事の画像一覧

シェアする

モバイルバージョンを終了