読者の皆さんは、集落の境や辻、峠などといった、地域の境界になるようなところに「道祖神」と書いてある石が置いてあったり、男女が並んでいる図像が彫り込まれた石をみたことはないでしょうか。
「道祖神」は、もともと古代中国の道教で信仰されていた「みちの神様」と日本で古くから信仰のあった「みちの神様」が合わさった神様で、別名で、「岐神(ふなとのかみ)」「道陸神(どうろくじん)」「塞の神(さいのかみ)」とも呼ばています。
「塞」とは「ものをさえぎって止める」という意味を持った言葉で、土地の人たちを見守り、病気や災害といった悪いものが侵入してくるのを防ぐ存在でした。また道路を行き交う旅人の安全も守ってくれる存在だとされてきました。
また、別名にある岐(ふなと)とは四つ辻のことをいいます。
岐神は辻に置かれる神様のことを表しました。『日本書紀』の一書には、イザナギが黄泉の国から逃げる時に、黄泉の国との境目に岐神を置いて穢れが入ることを防いだという記述が残されているのです。
この『日本書紀』における岐神が、今日信仰されている道祖神のルーツだとされています。