和食に用いられる野菜の多くが、いわゆる渡来種、外国からやってきたものであることは、かなり知られるようになりました。ほうれん草、ニンジン、白菜、玉ねぎ、かぼちゃ、芋、春菊、唐辛子、生姜、葱、オクラなどなど。枚挙に暇がありません。「日本の心」とか言いながら、私たちは全然日本原産でない野菜を大量に食べてたりするわけです。
別に、皮肉が言いたいわけではありません。逆です。私たちにとって「日本の心」とは、具体的な食材やアイテムに宿るものではなく、それこそ自分たちのハートの中にあるものではないかと言いたいのです。コンピュータに例えるならOSのように、常に背後に隠れ、でも動作の全てを支配してる、そういうものではないかと思うのです。
なので、私たちはどんな外来種も取り入れてしまう。日本のものにしてしまう。これは、野菜や食材のみならず、あらゆるフィールドで散見できる日本文化の特徴ではないでしょうか。
というわけで、ここで話は、ピラルクーです。
ピラルクー。アマゾン川に住む世界最大の淡水魚と言われてます。顔は鱧のように見えなくもないですが、体長は3m以上。中には4mとか5m級の奴もいるんだとか。一言でいえば、アマゾンの怪物というか、化け物という感じでしょうか。
何でそんな南米のおっかない魚の話をしてるかといえば、このピラルクーをブラジルの日本食店で使ってもらえるよう、現地で試食会が開かれたそうなんですよ。味付けはもちろん、和風。蒸し焼き、薄作り、吸い物、ペルー風セヴィッチ、から揚げの5種のメニューを用意したんだとか。
初のピラルクー試食会=和風な食べ方を提案 – ニッケイ新聞
アマゾン川の巨大魚と、和食。それだけ聞くと「無理です」と即答したくなります。しかしひょっとしたら、ほうれん草だって最初は「無理」だったかも知れないのです。ニンジンだって「ありえない」だったのかも知れないのです。ブラジルに根付いた「日本の心」が、見るからに大味そうなピラルクーを見事に料理する可能性は、ありえないとも限りません。
その料理法と食材が、もし日本へ「里帰り」したら。京都の料亭とかで「ピラルクーの揚げもんどす」とか「おピラのお造りどす」とか言うようになったら、楽しいと思いませんか。ああ全然思いませんか。失礼しました。