お葬式のときや畳に座ってご飯を食べるときなどにする「正座」。椅子とテーブルに慣れた現代の私たちにとっては、長時間座っているとぴりぴりと足がしびれてくる正座は、苦手な座り方かもしれません。
正座は日本の伝統…ではない?
一方で、多くの日本人が「正座は日本の伝統的な座り方」と思っている方も多いのではないでしょうか。
実はぴりぴりする足のしびれの正体は、足の神経が異常を感じて麻痺している状態。足が強く圧迫されることによって血のめぐりが悪くなり、「これ以上正座をし続けると危険ですよ~」という信号を出しているのです。つまり、正座をして足がしびれるというのは体の機能として正常な反応のひとつであるといえます。
今回は、そんな正座の歴史をひも解くとともに、足がしびれにくい座り方についてまとめてみようかとおもいます。
正座は奈良時代に中国から伝えられた
正座が日本で一般に広まったのは江戸時代のこと。
それ以前の日本人の座り方といえば、「あぐら」か「立てひざ」だったとされています。庶民はもちろん、身分の高い人も、男も女も、また十二単を着たような女性もあぐらや立てひざだったそうです。
今では行儀が悪いイメージの強い「あぐら」ですが、かつては「安座」と呼ばれ、江戸時代以前には公的な場での正しい座り方として認められていました。正座のイメージがありがちな茶道の世界でも、あぐらをかいて茶を点てていたほどです。
一方、正座は「かしこまる」と呼ばれ、庶民が身分の高い人の前で平伏する際など限られた場面での姿勢として使われていました。時代劇などでよくみられる、奉行所のお白洲に呼ばれた町人の姿を想像してもらうとわかりやすいと思います。
このような両膝を折って腰を下ろす座り方は、奈良時代に中国から伝えられたとされていますが、長い年月の間にお膝元の中国ではその座り方が忘れられ、現在正座ができるのは日本人だけだとされています。
その後、明治時代を迎えると、正座は、「日本人の正しい座り方」として、政府によって教育・普及されました。