はじめに・それってもしかして?
暮らしの中で「ちょっと不思議なこと」ってありませんか?
そんなに寝相も悪くないのに、起きると枕がとんでもない所に転がっていたり、特に用事もないはずなのに、無性に落ち着かなかったり、いつもの場所に、あるはずのものがなかったり……などなど。
本当は何か原因があるのでしょうが、昔の人はそうした不思議なあれこれについて「きっと妖怪の仕業だろう」と考えました。いったい妖怪たちは、どんな姿でどんなことをするのでしょうか。
人々の好奇心は自由な発想を育て、想像力ゆたかに妖怪たちの姿を描き出しました。時に恐ろしく、時にユーモラスに、どこまでも人間味あふれる妖怪たちの繰り広げるイタズラは、今なお暮らしのあちこちで見かけることが出来ます。
今回はそんな妖怪たちと、彼らのイタズラについて紹介したいと思います。
枕返し(まくらがえし。別名:反枕、枕小僧、枕坊主など)
目が覚めると、枕がとんでもないところに転がっている……それはもしかして、枕返し(まくらがえし)のイタズラかも知れません。
その姿は子供だったり僧侶だったり、あるいは小さな鬼のようだったりと様々ですが、人が寝ている枕を放り投げて安眠を妨げるのは(十分迷惑ですが)可愛い方で、中には布団ごと向きを変えてしまう、なんて大胆な犯行(?)に及ぶ輩もいるそうです。
大昔は「寝ている人の枕を動かすと、魂が離脱して戻れなくなる(=死んでしまう)」という信仰があり、枕返しはとても恐れられたものの、時代が下るにしたがって信仰が薄れ、枕返しは「単なるイタズラ」に中和されていきました。