ちょっと笑えるワカメ事件?枕草子のやりとりを探る:歌人で美男子 藤原斉信 編

しゃかりき

さて、前回に引き続き、「枕草子」に描かれた清少納言と藤原斉信とのやりとりについて紹介していきましょう。

前回の記事はこちら。

恋?それとも戦略?枕草子のやりとりを探る:歌人で美男子 藤原斉信 編

主家の記録としての「枕草子」[caption id="attachment_76321" align="aligncenter" width="640"] 「枕草子絵詞」(部分)[/caption…

今回取り上げるのは、清少納言の夫であった橘則光も関わるエピソード。ちょっと笑える話なので、恋愛抜きにしても紹介したいおすすめの段です。

居所を斉信には教えていなかった清少納言

紹介するのは「里にまかでたるに……」の段です。このとき、清少納言は宮中から退出して里下がり(自宅に帰っていた)していました。清少納言は自宅にまで人が訪ねてくるのは煩わしいので、多くの人に自宅の場所を教えていません。知っているのは、夫であった橘則光のほか、左中将・源経房、源済政くらいでした。

あるとき、清少納言のもとに則光がやってきていいます。

昨日宰相の中将のまゐりたまひて、「いもうとのあらむ所、さりとも知らぬやうあらじ。言へ」といみじう問ひたまひしに、さらに知らぬよしを申ししに……(後略)

「枕草子」(校注・訳:松尾聰・永井和子「新編日本古典文学全集」/小学館より)

宰相の中将とは斉信のことです。斉信が則光のところにやってきて、「(夫であるから)いもうと(ここでは清少納言のこと※一般には姉か妹のことだが、夫婦関係のような曖昧な立場を義兄妹のように称したとされる)の居場所を知っているだろう。言いなさい」としつこく迫ったのだといいます。

長く宮中から退出していた清少納言がいないのが寂しかったのでしょうか。二人がお互い教養を持つ親しい友人として付き合っているにしても、ちょっと斉信は清少納言を気にしすぎているようにも感じられるエピソード。

宮中で気の利いたやりとりができる相手がいないことが寂しいのか、はたまた「あなたに気がありますよ」というアピールなのか……。

3ページ目 夫・則光との関係も見えた「ワカメ事件」?

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