10月になり、新米の美味しい時期になりましたね。筆者の住む山形県では『雪若丸』という新品種のお米が話題となり、各店舗で品切れになるほど。如何に食生活が多様化しても、変わらず日本人が米食に込めて来た思いの強さを感じました。
かくも愛された米食の描写は日本文学においては枚挙に暇がありませんが、中でも最も知られた作品のひとつが宮沢賢治の名詩『雨ニモ負ケズ』です。
玄米は農民の強い味方!
『雨ニモ負ケズ』の詩は、小学校で朗読した方も多いのではないでしょうか。どんな天候にも負けない丈夫な体と無欲、静かな笑みを絶やさない心を歌った後で米のご飯について記されています。
『一日ニ玄米四合ト 味噌ト少シノ野菜ヲタベ』
玄米のご飯を味噌と少量の野菜と共に食べる慎ましやかにして、素朴な食卓の様子です。ここで注目すべきポイントは玄米。白米は当時の技術では精米するのに時間がかかって高コストだったことや、玄米は消化が遅くて腹持ちが良いことなどで戦前の我が国(特に東北地方の農村)では広く食べられていました。
また、白米を多食する都市部よりも玄米や雑穀を食べる地方の方が脚気になりにくかったように、玄米はビタミンやたんぱく質、ミネラルなどを一度に摂取できるスーパーフードでもありました。玄米を常食すると言うのは経済的、技術的な問題もありましたが、栄養価ではむしろ理想だったとも言えるのです。