みなさんは「千本桜」と聞いて、なにを思い浮かべますか?初音ミクでしょうか、或いは和楽器バンドでしょうか。「千本桜」という言葉が連想させる遥かな情景は、現代のポップスの世界でも私たちの心を捉えて離しません。
歌舞伎ファンの私はといえば、何をおいても不朽の名作として今なお別格の人気を誇る作品「義経千本桜」を連想します。壮大なその世界を少しだけご紹介したいと思います。
義経千本桜の内容
1747年に人形浄瑠璃として初演された「義経千本桜」は、源平の戦いが終わった平安末期が舞台。兄・頼朝から謀反を疑われた義経が、都を追われるところから物語が始まります。
落ち延びて行く旅路の中で義経は壇ノ浦の戦いで絶命したはずの平家の侍のドラマに触れ、彼らが実は生きていたという設定で繰り広げられる悲劇の連続を見届けてゆく…という内容です。
平家再興を願いながらも果たすことができない武将たちの無念や、別れゆく父子の姿など、深い悲しみの物語が続きます。そして物語のクライマックス「川連法眼館の場」は「四の切」と通称され、親しみやすく目にも美しい名場面として高い人気を誇っています。