思わず目を奪われるインパクト!運転中もそこに若冲!
世界的な若冲コレクターである、ジョー・D・プライス&悦子ご夫妻の全面協力のもと、伊藤若冲の名作「鳥獣花木図屏風」をモチーフとした漆のステアリングアートが制作されることとなり、クラウドファンディングでプロジェクトがスタートしました。
ステアリングは自動車のパーツの中でも、最もわかりやすい部分で、直接手で触れて握って、漆塗装の滑らかさや独特の温かみを感じるにはうってつけの部品です。このステアリングをキャンバスに、国産漆を使用し、精緻な蒔絵を漆絵を駆使した漆アートで、色とりどりの若冲の世界が鮮やかに描かれます。制作するのは岩手県の株式会社浄法寺漆産業。
ステアリングのモチーフとなる「鳥獣花木図屏風」は2隻の屏風に分かれているため、それぞれの屏風ごとに1つのステアリングを制作し、2本1組となり、漆絵バージョンと蒔絵バージョンの2種類で、合計4本のステアリングが制作を予定されています。
漆塗り、といえば食器などの漆器を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。日本の漆の歴史は古く、縄文時代の装飾品や、仏像や建造物にも多く使われ、日本の芸術や文化と深く結びついています。英語でjapanといえば、漆や漆器を意味するほど、漆=japan=日本なんです。
和のイメージが強い漆ですが、現在国内で使われている漆の98%は中国のものと言うのが現状。そのわずか2%の国産の漆のほとんどが、岩手県で生産されているのだそうです。国産漆は漆職人が15年ほど育てた気に傷をつけて一滴一滴集め、1本の木から1シーズンに200グラムほどしか採れません。とても大変な作業である「漆掻き」に携わる職人は現在20名程度で、後継者が育っていないという危機的状況に陥っています。
漆のステアリングアートを通じて、漆の魅力と国産漆の現況を広く知ってほしい、という思いからスタートしたこのプロジェクト。集まった資金は、漆塗りステアリング制作、展示会経費のほか、漆の苗木の育成と植樹にも活用されるとのこと。
後継者や資源不足など、大変な危機に直面している日本の漆産業ですが、文化財建造物の修理に国産漆の仕様が決まるなど、追い風も吹き始めました。漆器の良さも見直され、普段使いもできるモダンな食器なども登場したり、漆を使う金継ぎが人気になったり、漆が話題にのぼることも増えているように感じます。伝統的な産業がこれからも長く続いていくよう、応援したいですね。