「エレキテル」をめぐる不運
江戸時代を代表する才人を誰か一人挙げよと言われたら、多くの人が平賀源内の名を挙げるのではないでしょうか。しかし彼の悲劇的な最期については、詳しいことはあまり知られていません。
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もともと、彼はエレキテルを修復・自作したことで知られているため、理系の人と思われがちです。
確かに、源内は本草学(薬用植物学)に関しては日本屈指の大家でしたが、文系のジャンルにも強いという一面がありました。
なにせ戯作も手がける、洋画も描く、さらに小説も書くという多才ぶりです。
それに加えて、日本で初めて物産会を開いたり鉱山の採掘を手掛けたりするなど、ビジネスマンとしての一面もありました。
文化の爛熟した当時の江戸で、彼は「次々に面白いことをやる文化人」として名声を高めていきました。
さて、源内の人生の頂点は、エレキテルを自作してみせた49歳のときでしょう。
エレキテルはオランダから伝わった摩擦起電装置で、源内はこれを修理・自作してみせましたた。こうしてエレキテルは当時、珍しい器械として人気を集め、彼の名は高まりました。
が、これこそが源内を破滅に導くきっかけになりました。
弟子である職人の弥七がエレキテル人気に乗じ、源内に内緒でエレキテルを偽造して詐欺行為を働いたのです。
源内には何の罪もなかったものの、この一件で平賀源内の名声は失墜します。そして彼は世間から「山師」と見なされるようになったのです。