私事で恐縮ながら、中学生のころに部活で柔道を習いました。まず教わったのは礼法や道着の着方、そして受け身があります。
一本背負いや大外刈りなど、カッコよく相手を投げ飛ばす技を早く学びたかったものですが、大事なのは投げられた時に怪我をしないこと。
相手の攻撃をいかに受け流し、再び戦いに臨めるか。一度負ければそれでお終いではない、武道の根本精神を垣間見たようです。
相手を倒す目的を果たす以前に、自分が戦闘不能とならないことが大切。それは他の武道にも通じるものでした。
という訳で今回は江戸時代の武士道教訓集『葉隠(葉隠聞書)』より、島津飛騨守(しまづ ひだのかみ)のエピソードを紹介したいと思います。
見事な落馬ぶりに感動!「もう一度見せてくれ」
……いつの頃か、江戸幕府の第3代将軍・徳川家光が島津家の犬追物を見学したことがあったと言います。
※徳川家光に関してはこちらもオススメ↓
将軍・徳川家光の女装癖は本当だったのか?女装シーンが出てくる「若気の至り」の逸話とは
犬追物(いぬおうもの)とは平安・鎌倉時代より伝わる騎射の訓練で、逃げ回る犬を馬上から鏑矢(かぶらや。先端が丸くなっていて、刺さらない矢)で射るものです。
※犬にしてみればいい迷惑、アニマルウェルフェア(動物福祉)の欠片もありませんが、そういう時代でした。
なお島津家と言えば薩摩国(鹿児島県西部)の大名ですが、家光が現地へ行った訳ではなく、江戸城へ呼び寄せて披露させたのであろうことも書き添えておきます。
さて、犬追物が披露される中で、騎手の一人であった島津飛騨守が落馬してしまいました。
「あなや!」
周囲が固唾を飲んで見守る中、飛騨守は慌てず騒がず、見事な受身で無事に立ち上がったのです。
「おぉ……!」
安堵の息が漏れ聞こえると、家光は興奮して声をかけます。