松平家臣団のおよそ半分までもが寝返り、松平家康(演:松本潤)を窮地に追い込んだ三河一向一揆(永禄6・1563年~永禄7・1564年)が何とか終息し、寝返った家臣たちが徐々に降伏して来ました。
基本的にはみんな許して再び迎え入れた(そうでなければ領国の維持経営がままならなかった)家康ですが、中には素直に許せない者も少なくなかったようです。
今回はそんな一人、小栗忠政(おぐり ただまさ。又一)のエピソードを紹介。頑固で偏屈な三河武士を前に、家康はどうするのでしょうか。
改宗せよ!脇差を突きつけて脅す家康
「……よう戻ったな。どの面下げて……」
平伏する又一の胸倉をつかみ、家康は凄みました。
「己が過ちを悔いて、ただちに改宗せぇ。さもなくばこの場で刺し殺すぞ!」
もう片手で脇差を抜いて又一の鼻先に突きつけましたが、又一は眉一つ動かしません。
「どうぞ。如何様なりとも」
一度自分の意思で信仰すると決めた以上、脅された命惜しさに改宗するなど武士の名折れ。そんな毅然たる又一の態度に、家康が折れます。
「ふん。そなたの如き偏屈者、殺す価値もないわい」
掴んでいた胸倉を突き放し、その場を去ろうとした家康に、又一が言いました。
「……それがし、これより法華(日蓮宗)に改宗いたしまする」