大僧正の愛した「納豆」
【前編】では、天海大僧正が、長寿の秘訣として粗食(素食)を薦めていたことを解説しました。
108歳まで生きた徳川家康のブレーン!知識人・天海僧正の長寿の秘訣は?【前編】
では、108歳まで生きた彼は、具体的にどのような食べ物を好んでいたのでしょうか?
その代表格として挙げられるのが、なんといっても納豆です。天海が会津藩の出身であることは前編で説明しましたが、納豆は会津地方の郷土食です。そして、特に味噌汁に納豆を入れた納豆汁のことを、当地では「天海さんの味噌汁」とも呼ぶとか。
それほどに天海が納豆汁を好んでいたのは、単に「ふるさとの味」だったからではありません。彼は、納豆が健康長寿に効果的な食べ物であることをちゃんと知っていたのです。
そもそも納豆の原材料は大豆ですが、大豆には、必須アミノ酸のトリプトファンが多く含まれています。トリプトファンは、幸せホルモンとも呼ばれているセロトニンの材料になる成分で、これを多く摂取すると気分が穏やかになり、ストレスも軽減すると言われています。
まさに【前編】で説明した、「ときどきオナラをしてリラックスすること」を長寿の秘訣と説いた天海の健康思想と一致しますね。
納豆の健康効果
さらに納豆には、レシチンという肝機能を高めたり動脈硬化の予防につながったり、さらに脳の老化を防いだりする成分が含まれています。
他にも納豆には、細胞の再生に関わるビタミンB2など、数え切れないほどの健康成分が多く含まれています。
ただ、少し付け加えておくと納豆も万能というわけではなく、カリウムを多く含んでいることから、腎機能が低下している場合は接種を制限する必要があるなど、現代では注意すべき点もあります。
もちろん、そんな細かい栄養学的な知識は当時はなかったことでしょう。しかし、少なくとも天海は、納豆の持つ健康効果の側面についてははっきり認識していたと思われます。
例えば、晩年の徳川家康が天ぷらによって食中毒を起こした時、天海は体力回復にいいという理由で納豆汁を薦めており、これによって家康は一時的に大量を回復させたともいわれています。