古代から知られていた「牛乳」
現代はいつでもどこでも入手可能な牛乳。しかし実はその歴史は大変古く、古代までさかのぼります。
日本人が牛乳を初めて口にしたのは飛鳥時代、今から1400年も前のことです。
しかし現在のように一般に普及するようになったのは明治時代に入ってからでした。
なぜここまで時代に開きがあるのでしょう。まずは飛鳥時代から平安時代まではどのように飲まれていたのかを見ていきます。
645年頃に百済からやってきた人々によって、時の天皇に牛乳が献上されます。そしてまもなく日本国内でも本格的な酪農が始まり、皇族が飲むための牛乳が生産されるようになりました。
701年の大宝律令では都の近くに搾乳場を集める旨が定められます。1日2~3リットルもの牛乳が皇族の間で消費されたとも言われ、現代人と同じくらいかそれ以上に飲まれていたようです。
平安時代に最高潮の「牛乳人気」
蘇(そ)と呼ばれる、牛乳を煮詰めて作る、バターやチーズの原型ともいえる保存食も作られました。
また最古の医術書として知られる『医心方』にも牛乳に関する記述があります。そこには牛乳は美容やお通じによく、滋養強壮にも効くとする内容が書かれており、当時牛乳は薬のような扱いを受けていたことがわかります。
最初は天皇をはじめとする皇族のみが口にできましたが、皇族と縁深い藤原氏に伝わり、そこから貴族間にも広まったようです。
このように飛鳥時代から平安時代までは、皇族や貴族間で現代と変わらないほど飲用された牛乳ですが、その後600年、牛乳の飲用に関する記録はなくなってしまいます。
殺生を禁じる仏教の普及、朝廷の影響力の弱体化など、いくつかの要因によって牛乳を飲む習慣が廃れてしまったのものと考えられています。