もともとは「囲い」
私たちが日本の城と言われて想像するのは、もっぱら名古屋城や姫路城のような形の建造物でしょう。
しかし実は、あのような形の城は、日本史全体で見ると珍しい部類に入ります。
そんな日本の城の歴史を、前・後編に分けてたどっていきます。【前編】ではお城の始まりから、平安時代までの歴史となります。
まず最初に、城の起源となったのは、もともと集落を守るために設けられた囲みだったと言われています。集落を外敵から守るために、土塁や石塁で囲んだだけのものです。
その原型は、西日本の神籠石(こうごいし)や、東北に多くみられる城柵と呼ばれる軍事施設だとするのが従来の通説でした。しかし現在は、人々が住む集落自体が「城」の原型だったのではないかとされています。
こうした城の原型となった「囲い」は、まず堀を作り、余った土を盛り上げることによって造られていました。もともとの材料は土だったのです。だから「土」から「成る」ことで「城」となったのでした。
こうした古代の城は、シロとは呼ばず音読みで城(キ)と呼ばれていました。現在も、磯城(しき)・葛城(かつらぎ)・高城(たかぎ)・稲城(いなぎ)など、古い地名で「城」を「キ」と読むのはその名残です。