丸顔で、鼻が丸く低く、頬高で垂髪。さらに頬が丸く張り出した特徴を持つ「おかめ」は、日本に古くから存在する女性の仮面のひとつです。
食品などでも見かけるこの「おかめ」ですが、実在した悲劇の女性だったのです。
意外にも深く悲しいエピソードがありましたので、今回はそんなおかめさんについて詳しくご紹介したいと思います。
おかめさんの悲しいエピソード
おかめさんは、漢字で書くと「阿亀」となります。
今から約800年前、1227年頃に有名だった棟梁(大工)の長井飛弾守高次(たかつぐ)の妻でした。高次は京都の千本釈迦堂の本堂を建てる際に大切な柱の寸法を間違えてしまい、短く切りすぎてしまったことがありました。
高次は大工として腕も良く、人望も厚かったそうです。しかし、この失敗により、彼は大きく悩みます。そんな彼に妻のおかめは「桝組を用いたらどうか」と助言をしたところ、彼は無事に工事を終えることができました。
ここまでであればハッピーエンドなのですが、そうは終わりません。なんとおかめは、「専門家ではない私の提案で大任を果たしたことが人に知られたら夫の恥」と上棟式(「建前」または「棟上式」とも言われ、柱や梁、桁などの骨組みが完成した際に行う儀式を指します)の前に自害してしまったのです。
おかめさんと大工・建築
妻の自害のあと、高次は妻の冥福と本堂が永遠に守られることを願って、おかめにちなんだお面を扇御幣につけて祈りました。これは大工の信仰を得るようになり、地方に広まっていきました。
今でも、上棟式ではおかめの御幣が柱に飾られ、最後の完成まで祈るようになっています。優しく賢い女性だったというおかめ。そんな彼女が見守ってくれていると思うと、なんだか安心しますね。