シーメンス事件とは、旧日本帝国海軍がシーメンス社から金銭を受け取り、不正な方法で兵器を買い取った収賄事件のことです。
事の発端は、元シーメンス社員が重要文書を盗み出して本社を脅迫した事件の裁判中に、旧日本帝国海軍の首脳が賄賂を受けとっていた事実が明るみに出たことでした。
のちに、イギリスのヴィッカース社に戦後最後の巡洋艦と呼ばれる「金剛」を発注したことに関しても賄賂のやり取りがあったことも発覚し、大事件となったのです。
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日本で最初の探偵・岩井三郎が挑んだ大正時代の収賄事件「シーメンス事件」の真相【前編】
探偵頼みとなった異例の捜査
警察は旧日本帝国海軍からの圧力によって思うように捜査が進まず、市民から大きな反発を受けていました。そこで警察は、警察時代からスパイ摘発などで成果を挙げていた元警察官の私立探偵、岩井三郎に依頼。事件解決を目指したのです。
入札を利用した癒着
行政機関は、特定の企業と癒着しないよう、「入札」という仕組みを利用して公平に商品やサービスを購入します。
シーメンス社と旧日本帝国海軍は、この入札をうまく利用し、癒着していました。入札を簡単に説明すると、行政機関が入札前に下記のような情報収集し、希望する企業に価格競争をさせて、適正価格を提示した企業と契約を結ぶことです。
・予算の範囲内であるか
・どういった企業が入札に参加するのか
・競売にかけられる商品の相場はどれぐらいか
そうすることで、行政機関が自由に契約先を決めることができなくなり、特定企業との癒着をなくした公平かつ公正な取引が行われていました。
けれどシーメンス社は、旧日本帝国海軍の重役に賄賂を送って入札に関する情報を入手し、適正価格の入札することで契約を勝ち取っていたのです。
不正を繰り返し、契約を勝ち取ることにより、シーメンス社の売り上げはアップ。入札情報をリークした海軍の担当者は賄賂で私腹を肥やすなど、お互いに甘い汁を吸う状況が続いていました。