「和風月名」にひとつだけおかしな名前
日本の暦には、「和風月名」という独特のネーミングがあります。一月は睦月(むつき)、二月は如月(きさらぎ)と呼ぶあの呼び方です。
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カレンダーなどでは、こうした旧暦の和風月名が記されているものもたくさんあります。
こうした和風月名には、日本人ならではの風情を感じます。きっと、それぞれの名前に季節ごとの意味と特徴が込められているからでしょう。
例えば、一月は新しい年のはじめだから仲睦まじくすべし、ということで「睦月」。五月は、山や田の神である「サ神」が降りてきて田植えが始まるから「皐月(さつき)」となっています。
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このように四季折々の風習や気候に基づいた名前ですが、ただ、ひとつだけおかしな名前の月がありますね。
十月の「神無月(かんなづき)」です。
今回のこの記事では、この神無月の謂れについて掘り下げてみたいと思います。
十月だよ全員集合!出雲大社の大会議
神無月と似たような字面に、六月の「水無月(みなづき)」があります。これは暑さのあまり水が枯れることから水無月と呼ぶのですが、では十月「神無月」の、神が無いとはどういう意味でしょう。
実は、神無月は本当に「神が消えてしまう」のです。
日本には、津々浦々に八百万の神がいるとされています。その神様たちが、会議のために出雲の国へ出張するのです。
出雲と言えばご存じの通り、大地を司る大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)が祀られている出雲大社があります。神話の時代から続くというこの神社で、神様たちはわざわざ出張までしてどんな会議を行うのでしょう?
その主な議題は、人間の誰と誰を結婚させるか? というものです。
日本各地からやってきた神様たちは、自らが治める土地の人々の良縁を、他の土地に住む神たちと話し合うのです。
どうしてわざわざ出雲大社に出張ってそんなことを話し合うのかというと、大国主大神がその理由です。
大国主大神にはたくさんの子供がおり、彼らを全国各地に配置して国を管理させました。そして、子供らが年に一度出雲大社に戻り、その年について報告したり、来年のことを相談したりしたのです。そしてその場に、やがて他の神様も加わるようになったのです。
こんな理由からか、昔から出雲大社は縁結びの総本山でもあります。
ちなみに、このように神様たちが殺到する十月のことを、当の出雲の国(島根県)では「神在月(かみありづき)」と呼ぶそうです。また出雲大社では旧暦の十月十一日から十七日まで「神在祭」という神事も行われます。