貪欲な知識欲と生命力!縄文時代の人々の知識や創造性の源流を探る

古代の遺跡や遺物を見ていると、「言葉での記録が残っていないだけで、実は昔の人って今の人間よりも優れた知識や知恵を持っていたんじゃないだろうか……?」と感じることがありますね。

今回は、縄文時代の人々の、知識や創造性の源流について考えてみたいと思います。

縄文時代の始まりは、今から一万六〇〇〇年ほど前のことと言われています。この時代の大きな特色として、「食事革命」ということが挙げられます。煮炊き用の土器を作り出したことで、旧石器時代までの食生活がガラリと変わったのです。

土器によって「食」の幅は飛躍的に拡大

土器を持たない旧石器時代の人々は、主に野生動物の肉を食べていたと考えられます。しかし、肉は「焼く」「干す」程度の食べ方しか選択肢がありませんでした。旧石器時代の遺跡からは、しばしば礫群(れきぐん)と呼ばれる焼けた石が見つかることがありますが、当時の人々は焚火の中で石を焼いておいて、その余熱で蒸し焼きにするなどしていたようです。

しかし人間には、どんな環境にも合わせて食生活を送る能力が備わっていました。煮炊き用の土器を食生活に取り込むことで、生のままではとても食べられないドングリなどの木の実や植物の根・茎、キノコを含む山菜などを食材として活用できるようになったのです。

これがきっかけで、人々の「食」の幅は飛躍的に拡大していきました。

食材の狩猟・採集のための知識

まだ水田での稲作が始まっていなかった縄文時代。食材を確保する主な手段といえば狩猟・採集に限られていました。よって彼らは、身の回りの食材などについて、幅広く、深く、多様な知識を持っていたはずです。

なぜなら、そうした知識を持つことが、生き延びて子孫を残すことの大前提だったからです。

まず彼らは、縄張りの詳細なマップを頭に入れておく必要がありました。また、さまざまな植物の生長パターンや、動物の習性についても学んでいたことでしょう。さらに季節や天候の変化、食材ごとの栄養価や毒性、医療行為への活用なども、知識として習得していたと思われます。もちろん、狩猟用の道具についても相当の知識量があったことでしょう。

「食」の選択肢の発展が、こうした知識の習得を後押ししたと言えます。

縄文時代は、旧石器時代と比べると、高度に発達した「雑食性」の時代でした。そして雑食性が高いということは、脳内にインプットされている味の記憶・情報が極めて多いということです。

そうした環境で日常的に脳への刺激が与えられることで、思考能力が発達し、記憶力も向上しました。脳は使えば使うほど発達する器官です。脳の神経伝達がスムーズになれば創造性も高まります。

2ページ目 縄文時代は「味の情報化時代」

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